レポート

イベントレポート|『これからの活力について考えよう』
2025/01/20
2024年11月24日、活力共創研究所として第一回目となる開設イベントを開催しました。
初回のテーマは、「これからの活力について考えよう」です。
株式会社SmileWordsのひきたよしあきさん、ONE SLASHの清水広行さんをゲストに迎え、株式会社類設計室から小林、活力共創研究所から安藤が登壇。現役の中学生から経営者まで、世代や業界を越えた総勢71名の参加者の皆さまとともにトークセッションを行いました。
それでは、ここからはイベントの模様をお届けします。
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Session①そもそも「活力」とは?
活力共創研究所の開設イベントということで、そもそも「活力」とは何か、その根源に立ち返り、登壇者および会場全体で追求しました。

―活力共創研究所 安藤 太地―
活力とは、適応する力である。



活力共創研究所は『活力=適応する力』と定義しています。
人間を含むすべての生命は、外部世界に適応しようとする本能を持っており、厳しい環境に適応して、さまざまな機能を獲得し進化してきた。現代を生きる私たちも同様で、実社会に身をおき、他人と関わったり、様々に変化する自然と触れ合うことによって受ける外圧に適応しようとする状態が“活力”ではないか。
「活力共創研究所を開設し、積極的に外部と関わりを持ちたいと考えたのも、ここに集まった方々と互いに活力を生み出し合い、ひいては社会の活力向上につながればという想いからでした」と創設メンバーである安藤は語ります。
さまざまある社会問題のなかで、安藤は人口減少を一例に挙げました。「人口が減ってしまうなら、一人ひとりの活力を上げていけば活力の総量は維持される。あるいは、一人では難しいならば、横とつながり共創していけばよい。活力共創研究所は、活力を真ん中に据えながら、社内外のさまざまな活動をサポートしていきたい、あるいはその起点になりたい」
そのような社会問題に立ち向かい、適応しようとする姿勢は、まさに活力共創研究所が定義する活力を体現していると言えます。
―ONE SLASH 清水 広行さん―
“ネガティブ”が、活力の源になる。

元スノーボーダーという経歴を持つ清水さんは、滋賀県長浜市西浅井町のご出身。2016年に引退してUターンしたとき、地元の惨状を目の当たりにしたことをきっかけに、ONE SLASHという地域グループを結成し、事業をスタートさせました。
滋賀県長浜市西浅井町は、人口4000人程度の琵琶湖の最北端にある小さな町。清水さんがUターンして間もない頃、集落のお祭りは、出店がひとつもなく、神輿担ぎも中止になり、集会所で子どもたちにDVDを見せて解散。まるで活気がない状況だったと言います。
「子どもたちが大人になったとき、地元に帰ってきたいと思うだろうか。このままだと村自体なくなってしまうかもしれない」という危機感を感じた清水さんは、地元を盛り上げるため自らお祭りやイベントを企画。SNSを通じて宣伝し、広告費ゼロでの集客に成功し、人口4000人の町に、年間4000人の観光客が訪れ、閑散とした町から、だんだんと賑わう場所に変わっていったそうです。
お祭り企画の次にはお米づくりにも挑戦。地元農家の高齢化や担い手不足、つくっても儲からないといった状況を解消しようと『ライスイズコメディ』というブランドを立ち上げました。このときの出発地点も、農業を取り巻く問題=ネガティブを解決したいという想いだったと語ります。
「ネガティブなものをポジティブに変えようとすると、それだけで事業になる。それに気がついてからは、ネガティブを探すことが楽しくなっていきました」と語る清水さん。
逆境に立ち向かうことが活力を生み出すこと、と言えるかもしれません。
―類設計室 小林 有吾―
一緒につくった空間ほど、活力に溢れている。

「共創しながら設計をしていくと、空間ができたあとも活き活きと使ってもらえるという実感があります」と小林は、建築設計者の視点から語ります。
設計事業部でディレクターを務める小林は、設計のあり方がそもそも共創だと言います。
類設計室では、お客様にとことん寄り添い、一体となってプロジェクトを進めていきます。ときには十数回にわたり、お客様とのワークショップを開き、徹底的に掘り下げることで、設計という枠にとらわれずに新しい組織のあり方や働き方まで提案しているとのこと。
また、社内の事業部を活かした共創も活発になっていると言います。『類設計室』が設計した商業施設に、『類塾』がテナントとして入ったり、広場を活用して『類農園』がマルシェを開いたり。建物が建ったあとも、プレイヤーとしてまちづくりに参加し、地域活性まで手がけているとのこと。
小林は、「設計者の視点から活力共創が生まれる空間づくりや組織づくり、人づくりとは何か、追求を続けていきたい」と語ります。
―SmileWords ひきた よしあきさん―
互いの領域を超える翻訳から、共創は生まれる。

「それぞれの専門用語をわかりやすく翻訳して、さまざまな領域を行き来することができれば、共創が生まれやすい土壌ができる。それと同時に、活力も生まれてくるのではないか」と、ひきたさんは語ります。
以前は、博報堂でスピーチライターをしていたひきたさん。現在は株式会社SmileWordsの代表を務め、日本サッカー協会のコーチから西本願寺のお坊さんまで、さまざまな企業や団体のコミュニケーションコンサルタントとして活動されています。
その仕事柄、あらゆる企業や団体が「コミュニケーション」の問題を抱えていると肌で感じているとのこと。コロナ禍以降、リモートワークが増えたことにより、コミュニケーションに悩む企業も珍しくありません。また現代は、あらゆる情報がYouTubeやSNSで流れるようになりました。
「今まで専門領域を持っている人は、その領域にとどまっていたのでよかったのですが、あらゆるものが拡散される時代になっても、専門用語しか使えない人が多い。専門家の話している言葉はいわゆる方言です。
今の時代には、ジャンルの垣根を超えた、誰にでもわかりやすいコミュニケーションが必要で、コミュニケーションのギャップを解消することが共創を生む第一歩になる」と語るひきたさん。
日々コミュニケーションの課題を考えるひきたさんならではの視点でした。
―ディスカッション―
どんなときに活力が湧きますか?
セッション①では参加者の皆さまに「あなたは、どんなときに活力を感じますか?」というテーマでディスカッション・アンケートに回答していただきました。
参加者からは、
「活力とは、腹の底から湧き出るやる気のエネルギー!!
仲間と一緒にその過程を楽しみながら、結果成果を出せたとき、仲間との充足感一体感を感じて、とても活力がでます!人の役に立てた、必要とされていると感じると、活力でます!」
「(活力とは)おいしいものを食べる、笑う、風呂に入る、子どもの声…など、からだも心も喜ぶ力。」
「(活力とは)行動を起こし続ける源になるもの」
「活力がある場所には生き物が集まる、ない場所には生き物が集まらない」
など、様々なシーンにおける「活力」へのイメージ、感じる瞬間について意見が集まりました。

ひきたさん:近年リモートで仕事をすることが増えているが、家で一人で仕事をしても、達成感が得られないばかりか、みんなで一緒にやっている意識が希薄になり、孤独に陥ってしまう。
すると、個人の承認欲求や自己肯定感が満たされず、会社の組織活動自体も上手くいかなくなっていく。そういった状況があるからこそ、誰かと共創することの必要性を感じている人が増えているのではないか。
小林:さきほどの清水さんのお話は、聞いているだけで自然と活力が湧いてきました。
小学校時代の同級生と一緒に事業をしているそうですが、お互いの人間の背景がわかっていて、お互いが同じ原動力を持っているから、自然とやる気が湧いてくる。昔は地域にもそういった活力があったのだと思います。
安藤:組織内での共創のあり方や活力を向上させる方法については、これからも議論をしていきたいですね。
Session②皆さまの「活力」に関する課題は?
セッション②でも、引き続き参加者の皆さまのディスカッション・アンケート回答をもとに、活力に関する課題について、さまざまな切り口でセッションを行いました。
参加者からは、
社会の活力の課題について…
「日本がやばいと言ってるのに、日本を何とかしようとは思っていない。個人の活力はあるがベクトルがバラバラで社会の活力は無いのが課題。」
集団や身近な人の活力の課題について…
「昭和の人と今の人の活力の出方が違う。合意形成の仕方も違う。」
「働く場で本音を出せる人がいるかいないかによって活力も変わる。仕事を完璧にこなそうとして疲弊したり、放任されると戸惑ったりする人もいる。」
「仕事のことも、自分や家族のことも繋げて考えられると活力と繋がりそう。」
など、多様な世代の視点から、社会やそれぞれの日常生活で感じている課題について意見が上がりました。

大人は楽しい、と教えてくれる人がいない。
参加者(大学生):朝電車に乗ると死んだ魚の目をした人がいっぱいいます。それは活力がない状態だと思います。また、私の親も含めて、「大人になったら楽しいことがあるよ」と教えてくれる人がいません。

清水さん:そういう学生さんや子どもたちも多いと思いますが、僕は早く大人になりたかったタイプです。高校生のときも、早く卒業したいと思ってました。
それは、地元の先輩たちが楽しそうだったからです。先輩が学校の前に車で迎えに来てくれて、いろいろなところに連れてってもらいました。それが僕にとってはすごく刺激的でした。僕が今、地元に戻って思うことは、子どもたちにとって憧れる背中がないということ。
お祭りが縮小していたのも、大人がサボっていたからだと思います。
動画以上に面白いものを、大人が見せればいい。
参加者:私は子どもたちに勉強を教える仕事をしていますが、勉強を教えるだけではなく、お子さんのやる気をいかに引き出すかということも大切だと実感しています。最近、保護者さんからの相談で多いのが、「子どもがずっと動画を見ている」という悩みごとです。何か解決方法や突破口があれば教えていただきたいです。

清水さん:僕らは、お米づくりの一環で『ゲリラ炊飯』という活動をしています。全国のいろいろな街に羽釜と薪を持っていき、いきなりお米を炊いて通行人に一方的におにぎりを振る舞うという活動です。
毎回数百人の行列ができますが、子どもは何回も並び直して、何個食べられるか競い合いになったりします。
あるとき、親御さんが僕らに言ったのが、「この子、家では白米食べないんです」という一言。そんな子が、何十個もおにぎりを食べた後に、「お母さん、僕もお米つくりたい」と言ったそうです。
これはまさに、活力を与えられた瞬間なんじゃないかと思います。
おそらく、動画ばかり見ている子どもには、動画を超える体験が必要なのではないでしょうか。現実世界で動画以上に面白いものを、親や周りの大人が見せてあげることが大切だと思います。
ひきたさん:以前、ある企業で、会議が全く活性化しないという相談がありました。
その企業の方が「今の若い子はリモートのモニター上で会議を見ているような感覚なんだろう」とおっしゃっていました。オフラインの会議に参加しているのに、全員オンラインでモニターを見ているような顔をして、ミュートして黙っているように話を聞いているんです。
私も講師として大学で授業をするときに、同じようなことを感じていました。授業のなかで試行錯誤をしましたが、雑談をするというのが一番効果的でしたね。「まずグループで雑談をしてみよう!」と。すると生徒たちも以前より活発に授業に参加してくれるようになりました。
ゲリラ炊飯もそうですし、人と話したり、ほんの少しの違いで、割と簡単に解決できることもあるのかもしれません。
活力向上・共創を促すのが組織の役割。
参加者:昭和の人と今の人の活力の出し方が違う。合意形成の仕方も違う。そのギャップを埋めるにはどうしたらいいですか?

ひきたさん:おそらく決定的に変化したのが、2016年に問題になった過労死の事件です。
そこから労働時間の問題が浮き彫りになって、2017年ごろに「あまり残業させてはいけない」という法律ができました。それからちょうどコロナ禍のころ、パワハラで損害賠償責任を問う事案が出ました。
コロナ禍が明けて、会社に通うようになって、生活をもとに戻そうと思ったときには、分厚いマニュアルができていたんです。新しく入社してくる人たちにとっては、そのマニュアルが常識になっているのですが、上の人たちにとっては、これまで普通に喋っていたことがパワハラになったりするわけですから、困惑しますよね。上司に何か言われたときに、弁護士を連れてくるという人もいる。
これは昭和云々というよりも、コロナを挟んだここ何年かの潮流かもしれません。時代の隔たりだけでなく、法律やルールなども、コミュニケーションに大きく影響するということを念頭におかなければいけません。
部下に対して強く言えない、コミュニケーションを取ることすら難しいと感じている上司の方が、今ものすごく多いのではないでしょうか。そうしたなかで、組織としても、活力向上や共創を、これまで以上に促していく必要があるのではないかと思います。
ゲリラ炊飯で参加者がつながる場に。
会の後には、「交流サロン」が開催され、ライスイズコメディによる「ゲリラ炊飯」が実施されました。ゲスト登壇者と参加者がおにぎりを頬張りながら交流し、会場は終始にぎやかな雰囲気となりました。






最後に、参加者のみなさんからのコメントを抜粋してご紹介します。
- 「自分にない思考を得られることができ、とても刺激的な良いイベントとなりました。」
- 「他ジャンルの方と活力という一つのテーマで会話ができ、非常に楽しく、考えさせられた」
- 「まさに活力の湧く会でした!」
予測不可能な時代において、一人ひとりの、そして、社会の活力をどのように生み出していくのか。その解決策は一つではありません。
しかし、参加者全員の意識で共通していたのが、今の日本は活力を失っているということ。
大人に混じり参加した中学生からの「大人は楽しい、と教えてくれる人がいない。」という言葉は、私たちの社会に潜む課題をストレートにあぶりだしてくれたように思います。
一方で「“ネガティブ”が、活力の源になる。」という登壇者の発言は大きな可能性を示してくれました。
活力=適応する力。逆境であればあるこそ、それを乗り越える楽しさがある。一人ではなく、仲間がいれば、互いの活力を高め合うことができる。
これからも活力共創研究所は、共創の場・研究・実装を通じて、現実課題に立脚点を置きながらその課題の背景を「そもそもから考え」、これからの時代の可能性を探っていきます。そして、何よりも「元気が出た」と腹の底から思える活力共創の場づくりを続けてまいります。
Talk Guest
ひきた よしあき
政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、多くのエグゼクティブからの指名が殺到している。また、大阪芸術大学、明治大学、慶應MCCなどで教え、著書は現在24冊、累計35万部。世代を超え、職種を超え、自分と相手を笑顔にするコミュニケーションの重要性を日本全国に伝えている。
清水広行
ONE SLASH/RICE IS COMEDY代表/滋賀県MLGsふるさと活性化大使/1986年生まれ。元スノーボード選手。2016年に地元にUターンし、地域グループONE SLASHを結成。長浜市西浅井を拠点に米づくりからまちづくり、環境・教育事業、家業の建設・建築まで実業家としてマルチに活躍する。